新留 一輝

for Reader 編集長

新留 一輝

鹿児島県奄美大島生まれ、東京都清瀬市育ち。大学を卒業後、調理師専門学校で調理師の資格を取得し、大手飲食チェーン店に入社。その後、出版社で広告営業や雑誌・Webメディアの編集に従事し、SEに転身。2018年、overflowに参画し「for Reader」の編集長に就任。料理やお菓子作りが得意。

多様な個性が集まるoverflowの中でも異色の存在感を放つ新留。そのキャリアは調理師、農作物生産、営業、SE、編集者と職種に軸はなく、すべては未経験からの挑戦だ。唯一の共通点は「興味がある」だけ。そんな新留のこれまでと今、そしてoverflowで見据える未来を伺った。

for Readerは「読者のために」を考え抜くサービス

——:まずは現在の担当業務から教えてください。

「for Reader」の編集長としてクライアントへの提案や編集部メンバーのマネジメント、記事クオリティの管理、さらにはnoteなどを通じて私達の取り組みを発信するなど、一言で言うとなんでもやってます(笑)

——:「for Reader」についても説明をいただけますか?

for Readerとは、クライアントが運営しているメディアに最適なコンテンツを制作、SEOの設計、マネタイズ支援などをするoverflowの事業の一つです。人員としては、70人ほどの組織にまでに拡大しています。

コンテンツマーケティング事業というとイメージしやすいと思いますが、我々の場合にはクライアントが「こうしたい!」という意向を鵜呑みにするのではなく、「読者が求めているコンテンツはこれです!」と、提案していくことに重きをおいていますね。

——:新留さんはoverflowの初期から参画されていますよね。入社された当初はどんなことをされていたんですか?

最初はfor Readerの前身でもあるコンテンツSEO事業を担当していました。2018年にoverflowにジョインしてすぐに編集長を任され、その時は記事コンテンツの制作フローを一新することからスタートしました。

——:具体的にはどんなことを?

当時、記事コンテンツのライティングはクラウドサービスに依頼する方法が多かったんですけど、クオリティの均一化に課題がありました。

そこで考えたのは、出版社の手法を取り入れること。編集長、副編集長、ライターと役割と責任を明確にし、組織化していったんです。

——:当時はfor Readerという名前ではなかったんですよね。名前を付けたきっかけは何だったんですか?

もともと事業に名前がないまま成長してきたんですけど、きちんとブランド化していこうと思って名前を付けたのがきっかけです。

名付けるにあたって「僕らがやってることってなんだろう?」って考えたんです。SEOって大量生産ってイメージがあると思うんですけど、それであっても読者のことを考えて作らなければ意味がない。そこで「読者のために」を常に考え続けるために、「for Reader」としました。

——:これまで手掛けてきたクライアントについて教えてください。

出版社や大手通信会社、ゲーム会社、スタートアップなどさまざまな企業が運用するメディアを手掛けてきました。どのクライアントも共通して、メディアを通じて成果を出すことに課題を感じていました。

参考記事
・『お絵かき図鑑』の月間UUをわずか半年で0から数十万人に増加させたコンテンツ制作術
・〈前年比UU500%増〉インバウンドプラットフォーム事業を行うWAmazing株式会社のメディア戦略とは?

——:そのようなクライアントがfor Readerに期待することとは?

最初は「流入数を伸ばしたい」「記事を大量生産してほしい」から始まったんですが、次第に「CV数を上げたい」「専門性のある記事を作りたい」といった話をいただくようになりました。

そんなニーズに対応しつつ、読者目線のコンテンツ制作ができるように、メンバーのスキルや知識をアップデートしたり、よりコンテンツの質を上げる管理体制の整備などをやり続けています。

「読者のために」ということを考えて制作し続けてきたので、例えばGoogleのアップデートがあっても、僕らが作った記事の評価はほとんど落ちていないんです。読者のためを思って作ることが大事なんだなと改めて実感しています。

——:「読者のために」ということに真摯に向き合った結果、成果も出ているのは嬉しいですね!

そうですね。SEOはあくまでもGoogleが定めたルールであり、それを踏まえた上で読者にとって有益なコンテンツを制作しています。

SEOってブラックボックスで怪しいというのは過去のイメージです。SEOというルールに則った上で、読者に向き合って記事を真面目に作った結果、検索結果の上位に表示され、トラフィックが伸び、クライアントの事業の成果につながっているんです。どこよりも真摯に記事制作に向き合っているサービスなんだと思ってもらいたいですね。

興味を持ったことに邁進し、好きを突き詰めていく

——:Webメディア運営やSEOが専門領域かと思いますが、いつ頃からこの領域に興味を持たれたんですか?

社会人になってからですね。ちなみに大学では生物学を専攻していました。高校まで東京に住んでいたのですが、キャンパスは北海道の網走市にあったので、4年間ずっと網走にいましたよ。

——:理系出身でしたか!? そしてよく網走へ行こうと思いましたね!

大学のオープンキャンパスを巡っていたとき、重力負荷マウスの研究と出会って興味を持ったのがきっかけです。すごく面白そうだなと思ってそこに進学を決めたのですが、場所が網走だったんです。ただ、大学に入ってからは、別の研究に没頭していましたけど(笑)

——:そんな決断があったんですね。大学を卒業後、どんな会社に就職されたんですか?

新卒では就職しなかったんです。もちろん就職活動はしていて、数社から内定をいただいたんですけど、どうしても興味が持てなくて……。

そこで一旦好きなことをやってみようと思い、内定を辞退して、東京の調理師専門学校へ1年間通うことにしました。単純に料理が好きですし、手に職があれば食べていけるなと思ったからです。

——:大学と関係ない道ですね(笑)

専門学校卒業後は外食チェーン展開をしている会社に入社しました。1年目は魚料理の専門店に配属されて、都内の店舗をいくつか経験し、副調理長代行や店長代行も務めていました。

その後、本社の商品部に配属され、2年目は網走に転勤になりました。

——:えっ、また網走ですか!?

この会社は網走に農場を保有していたんです。僕が網走にいたことを会社も知ってたので、「網走の農場に行かない?」なんて言われて冗談だと思ってたら、本当に網走へ赴任することになって(笑)

このときにフォークリフトやショベルカーも乗れるようになったんですけど、こんなスキルを持ってる編集者はめずらしいと思います(笑)

——:新たなスキルがつきましたね(笑)

あとこの農場の業務と並行して、水産物の仕入れもやってました。イメージしやすいのは市場でのセリですね。

幼いころからの夢を叶えるため出版社へ

——:次はどんな会社へ行かれたんですか?

時計や靴などの雑誌を発行している出版社に転職しました。

——:これまた今までとまったく別業界ですね!

小さい頃から本が好きで、相当な数の本を読んだと思います。なので、本に何かしらの形で名前が載ることって夢だったんです。

——:ここではどんな本の編集をしていたんですか?

実は編集で採用されたはずなんですけど、営業部に配属され、半年ほど雑誌の広告営業をしていたんですよ。

その後、正式に編集部に異動となり、時計雑誌に関わりながら、時計メディアのリニューアル責任者を担当しました。ここで企画立案や数値の測定、必要なコンテンツ数など、今の仕事にも繋がる仕事を経験しました。

——:このWebサイトを運営するにあたり、設定されていたKPIを教えてください。

広告主が気にされてるのがPVやUUだったので、月間100万PVを目標としていました。もともと数万PVだったメディアなのですが、スマホへの最適化やコンテンツ量の増加など施策を積んでいって、最終的には目標に肉薄する数字まで成長させることができました。

それとこの事業と並行して、アプリ開発のディレクションも会社からの指令で担当していたんです。

——:編集もそうですが、アプリ開発の経験もなかったですよね?

はい、経験ゼロです。アプリ開発会社の方に教わりながらやってました。実際、ローンチはできたんですけど、至らなかったなと思います。僕も開発会社も、ユーザーの「かゆいところに手が届く」までの開発ができなかったんです。

この経験で、今後はITの知識がないと生きていけないと思って。SE(システムエンジニア)を経験しなければダメだと考え、次の会社へ転職をしました。

——:そう思うことはあっても、辞めて、SEになろうって決断はなかなかできないと思います。SEももちろん未経験ですよね。

そうですね。htmlとcssしか書けませんでした。仕事をしていく中でJavaやSQL、JSは少し書けるようになったんですけど、コードを書く楽しさには目覚めなかったです。

——:このときの経験は今に活きていますか?

はい、エンジニアと話がしやすくなったので、エンジニア的な考え方は活きてますね。あと、スプレッドシートを使うとき、どうデータベースを持って設計していくか、といったところはエンジニアの経験があったからこそだと思います。

——:SEの後はどんな道を選んだのでしょうか?

フリーの編集者として、ゴーストライターやったりカタログの編集したり、いろいろやっていました。ある日、たまたまoverflowが出稿していたindeedでの募集ページを見たのがきっかけで、2018年6月にジョインしました。

当時、overflowがindeedをハックしてて、私は3,000円で採用できたらしく、CEOの鈴木さんからは冗談交じりで「3,000円の男」と呼ばれています(笑)

「3,000円の男」、創業間もないoverflowで誕生

——:鈴木さんがTwitterで「3,000円の男」とつぶやいたエピソードですね。

そうですね(笑)

池尻大橋のプロントで鈴木さんと会って、過去に作ったものを見せたりしていました。そうしたら鈴木さんが「この後、時間ある?」って言って、「ありますよ」と答えたら、「もう1人の代表の田中に会わせたい」って言ってくれ、マンションの一室に連れ込まれて(笑)

次の日には「入社してほしい」って連絡をもらい、次の週にはジョインをしていました。

——:鈴木さんも新留さんもフレキシブルですね! ちなみに改めて今新留さんが考える「overflowらしさ」とは?

そうですね、やっぱり性善説ですかね。

各担当者がプロフェッショナルとして信頼していて、結果も出ているのがすごいですね。それを支えている仕組み化やオペレーションが出来上がっているので、バリューを発揮しやすいのかなと思います。

——:メンバーが70人もいるfor Readerだとコミュニケーションは大変じゃないですか?

for Readerに関していうと、僕は「いかにコミュニケーションを取らないか」ということを重視しています。

例えばマニュアルやルールの整備、システム化、自動化などを行うことで、不要なコミュニケーションを必要としない状況を作るようにしました。例えば「進捗ってどうですか?」「これ見ましたか?」といったコミュニケーションはカットできるよう、力を割いています。

とはいえ、全員がリモートなんで齟齬が発生することもあると思います。それを解消するためにリーダー陣とは週1日でミーティングをしてますし、メンバーとも1on1をしているので、人となりが分かって仕事をしやすい状況を作ることに重きをおいていますね。

——:この点を重要視しているのはoverflowのカルチャーでしょうか? それとも新留さんの働き方ですか?

overflowですね。再現性・効率化に重きをおいた組織で、無駄なことはやらず、必要なことに注力する体質が良いなと思ってます。

あと個人的にフローを作るのって楽しいんですよ。「これやりきったら、これだけ時間が短縮できるな」とかを考えるのは楽しくて、ここに時間をかけることは苦じゃないですね。むしろやるべきことかなと思ってます。

——:無駄なことを排除した結果、土日はしっかりお休みが取れてると思います。ちなみに休みの日はどんなことをされてるんですか?

調理師時代のスキルを活かして料理をすることが多いです。今は娘と一緒にお菓子作りをするのが楽しみですね。

——:なるほど! 過去に得たスキルは無駄になっていないんですね。ありがとうございました!